2025年度 理事長所信
公益社団法人だて青年会議所
第45代理事長 髙田 祐太
スローガン
不動心
~不動の情熱が歴史と未来を紡ぐ~
【はじめに】
青年会議所の使命は「青年が社会により良い変化をもたらすために、リーダーシップの開発と成長の機会を提供する。」ことであり、このJCIミッションは時代に合わせて改定をされますが、青年に発展と成長の機会を与え続けるという組織の使命はいつの時代も変わらない軸となっています。
私は、東日本大震災後の2011年10月、23歳でだて青年会議所へ入会をしました。月に1回ある例会に出席すれば良いと言われ何もわからないまま入会し、数日もたたないうちに名古屋市で開催される全国大会に参加する機会をいただき、青年会議所のスケールの大きさに圧倒された記念式典、卒業式の光景を今でも鮮明に覚えています。それからは、様々な機会にふれる度に見える未知の景色と経験、そして、彼のようになりたいというメンバーとの出会い、いつも気にかけてくれる先輩たちと過ごす時間は、少しずつですが、確実に自分の成長につながっていることを感じることができていました。そして同時に自分の未熟さも痛感し、できる限りの機会に挑戦し、経験し、自分自身が成長したいという想いと、あの人を支えたいという2つの想いが今日まで私を突き動かしていました。社業と家庭、青年会議所との狭間で、青年会議所の活動でしか経験することはできないであろう苦しみと喜びを幾度となく経験し、その度に仲間の存在に支えられ、なぜ青年会議所で活動をするのかという自問自答に立ち返りながら今も挑戦を続けています。
時代の変化が早いといつの頃からか枕詞のように使われるようになりました。テクノロジーが進歩し、新たなサービス、コンテンツが生まれ、教育や働き方、対人関係のあり方や生き方の価値観が変わることを時代の変化と呼びます。各分野の課題を解決するために生まれたこの変化は起こるべきものです。しかし、人は無意識に現状を維持したいというバイアスによって自身の「何か」が変化してしまうかもしれないという漠然とした不安感を抱いてしまうのだと思います。しかし我々もまた、地域により良い変化をもたらし、自らが時代を変化させる存在にならなければなりません。迷ったときは、なぜ青年会議所で活動をするのかという問いに立ち返り、青年会議所にしかない、多くの発展と成長の機会に挑戦することで、あなたと大切な人が住まうこの地域を、明るく照らす存在になれると信じています。
【次世代につなぐ創立45周年記念式典・記念事業の開催】
だて青年会議所創立45周年にあたり、44年という永きに亘り、リーダーとしての研鑽を重ね、時世時節の課題に向き合い、だて地域の発展のために尽力し、その歴史を紡いでこられた先輩諸兄姉に深く感謝と敬意を表します。また、これまでだて青年会議所の運動、活動に賛同し、お力添えをいただいてきた関係各所、行政、各団体、そして市民の皆様に深く感謝を申し上げます。
「『伊達はひとつ』を基本理念として伊達地方7つの町からJCの旗の下に参加した我々青年は、常に互いに高め合い、友情を深めることに心し、英知と不断の情熱をもって、ふるさと伊達の輝く未来を創造するため、すべての障害を超えて絶ゆまず行動する。」1981年4月25日、だて青年会議所はこの「だてJC創立の心」を胸に、日本青年会議所から681番目の青年会議所として認証をいただきました。この創始からの歴史を振り返り、感謝の意をもってその歴史を次世代へとつなぐ、創立45周年記念式典をOB先輩諸兄姉、ご来賓の皆様とともに盛大に開催いたします。
2020年度の40周年では2025年までの5か年に向けたビジョンを策定しました。
組織づくり、まちづくり、ひとづくりの3つの柱によるビジョンを掲げ、今日まで運動、活動の方向を示す道標となっていました。しかし、取り組めた分野、取り組めなかった分野が存在します。2025年度はそのビジョンをもとに過去4年の運動を検証し、次世代に向け、時代に即したビジョンを策定いたします。バックキャスティング※1でこの地域と組織が明るい未来に向かって歩みを進められるために、明確な未来を描き、共有してまいります。
2024年度は本年の周年を見据え、だて地域の高校生が主体となり、高校生が自ら企画、立案、実行することができる高校生主体のコミュニティダテノワを発足させることができ、学生自らが地域の魅力を発信する事業をだてなフェスと共催で開催することができました。高校生の課題解決の能力と主体性を育むことを目的としたこのコミュニティには福島県を拠点に活動する大学生団体と高等学校などのサポートがあり、コミュニティを通じてチャレンジをした高校生が卒業した後も大学生や社会人となり、後輩をサポートするという循環の仕組を目指し構築しています。この高校生コミュニティダテノワとだてなフェスとの結びつきをさらに強め、相乗効果を生み出すことで、地域に新たな価値を生み出す持続可能な運動とするべく、明確なビジョンをもって記念事業として構築、開催いたします。
【真に持続可能なまちづくり】
2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し、このだて地域も地震被害と風評被害に悩まされることとなりました。翌2012年、地域に対する風評被害を払拭すべく、「だてな復魂祭2012」を開催し、だて地域の食のナンバー1を投票で決するD-1グランプリで、食文化から地域の安心安全を発信するために、継続事業として実施しました。2014年からは、霊山太鼓まつりと共催となり、だて地域の子どもたちの夢を描いた桃色の鯉のぼりを7,494匹掲揚し、ギネス記録世界一を取得しました。2016には伊達市合併10周年記念事業として、名称を「だてな太鼓まつり2016」に変更し、2019年までピークには2日間で10万人以上が来場する地域にとって魅力ある事業の1つとなりました。そして2020年以降は新型コロナウイルス感染症蔓延もあり、だてなフェスという全く別の形での事業にチャレンジをしてまいりました。2024年には高校生による学生コミュニティダテノワとの同時開催に挑戦し、新たな運動の形が見えつつあります。全国各地で行われている、まちづくりのためのまつり事業は地域の誇りや活力の源となり、地域コミュニティの活性や交流人口の増加に寄与することができます。一方で継続できる仕組みづくりが構築できなければその実施効果を十分に発揮することはできません。継続する上で、カウンターパートに役割を委譲することや資金不足の解決も重要ですが、最も重要なのは何のために実施するのかという目的設定と数年後こうありたいという具体的なビジョンを描き、それを共有し、共感を得ることです。だて地域が魅力に溢れ、誰もが誇れる地域となるための明確なビジョンを描き、学生が地域で挑戦できる循環型の高校生コミュニティダテノワとの相乗効果をさらに強め、持続可能なまちづくりを実現してまいります。
【災害に強いまちづくり】
これまで、当青年会議所でも災害時には各行政、地域団体をと連携し、災害復旧活動をはじめとする様々な支援に取り組んでまいりましたが、2011年の東日本大震災の経験がその行動に大きく活かされています。当時から続く長い復旧、復興の道のりの中で全国の多くの方々から支援をいただきました。支援の内容も様々あり、支援を受ける側の経験も組織の中で引き継がれています。東日本大震災、令和元年東日本台風という歴史に残る大災害を経験したからこそ、被災地域に何が必要なのか、どんな行動をとるべきなのか、改めて、東日本大震災から15年目を迎え、組織内の経験世代が入れ替わる本年にその経験を継承する必要があります。
災害は毎年のように全国各地で発生しており、青年会議所のネットワークで支援に伺わせていただく機会も増えてきました。世界から見ても、日本は世界で4番目に災害の多い国です。特に地震と台風、それに伴う洪水や土砂崩れなどの水害は国内98%の地域で発生しており、多くの地域で人々の生活を脅かしています。止めることができないこの自然災害に対し、私たちができることは防災と減災に取り組み、いつ来るかわからない自然災害に備えることです。特に災害があることを前提とし、地域、家族単位で防災、減災の意識を高めることが重要であり、平時からその意識の醸成するために防災、減災に知見のあるパートナーと連携し、取り組むことで災害に強いだて地域を実現してまいります。
【シビックプライドを醸成するひとづくり】
青年会議所には70年以上の歴史でこれまで全国で積み上げてきた青年会議所運動の仕組みや実績がありいつでも共有資料として閲覧できるようになっています。大いに参考に活用するべきだと思います。しかし、いくら手法などを真似できても青年会議所の理念やアクティブシチズンフレームワーク等※2の基礎となる運動構築のロジックを理解できていなければだて地域に適した課題解決につながる運動を起こすことはできません。メンバーが青年会議所について正しく学ぶ機会をもつことで、本質を捉えられる力と確度の高い運動で地域の発展に寄与できる人材の創出につなげてまいります。
まちづくりには政界や行政などカウンターパート※3との連携が不可欠ですが、これからの未来を担う若い世代の参画も重要です。しかし、少子高齢化によって、年齢別人口を見ると若い世代の声は政治に届きにくいのは明らかで、行政の総合戦略では市民アンケート等で若い世代からも意向を吸い上げるなどの工夫はあるものの、現状は行政が若い世代の意見を取り入れたいと思っていてもその方法は限られたものしかありません。
自身が住む地域に対し、誇りや愛着をもち、地域社会に貢献したいと考える、シビックプライド※3の醸成によって、自分たちがまちづくりをするのだという意識を高め、様々な形でまちづくりや地元政治へ参画するという行動につなげることが重要です。若い世代と青年会議所、政界、行政が連携することで、若い世代のシビックプライドを醸成し、地域のために行動できる人材を育成してまいります。
【共感による会員の拡大】
青年会議所は人の意識を変革させることができる組織です。入会動機は様々ありますが、青年会議所に入会し、組織の中で多くの発展と成長の機会にふれることで、この地域がより良くなるためにはどうしたらいいか、さらに魅力的な組織になるためにはどうしたらいいか、ごく自然に、そして真剣に考えられるようになります。それが、他者の意識変革に伝播しつながっていく、意識変革が循環するのが青年会議所組織です。しかし、その循環の輪は組織の外にも流れなくてはいけません。事業を行う上で、地域活性化事業も、青少年育成事業も、対象者に意識を変革させる機会を与える、JC運動と言われる意識変革運動は組織のアイデンティティとなる重要な運動ですが、あくまで手法でしかありません。JC運動の循環の輪は、共感による意識改革が入会につながったときにはじめて循環する輪となり、真に持続可能なJC運動になります。つまり会員拡大はJC運動の第一歩であり本質であるということです。組織を維持することが目的ではなく、共感によって同志が集うことで、なんの実績もないこの組織が生まれたように、JC運動の本質である、共感による会員拡大に全員で取り組んでまいります。
【おわりに】
私がまだ子どもだった頃も、大人になった今でも、どんなときも情熱を注ぎ、真剣に取り組んだ時が一番楽しさを感じます。怠けたい気持ちに負けて、手を抜いて過ごした時はなんて無為な時間を過ごしてしまったと後悔をします。今でも葛藤がありますが、この気持ちを思い出しながら何事にも取り組むようにしています。しかし、青年会議所や仕事にどんなに情熱をもって真剣に取り組んでいても、本当に苦しい時はなんのためにやっているのかわからなくなる時もあります。どんな人も一切迷わずに進み続けることはできません。社会という不安定で荒れた海の上で不動の地位を築いているように見える企業でも、常に大小の波に揺さぶられています。それでも沈まずにそこにいるのは、揺さぶられ、目の前が暗く、迷いそうになっても、すぐに戻れる理念や信念という芯をもっているからです。その舵を握るリーダーもまた、荒波の中で不安や怒りの感情に揺れるものです、それでも、本来の姿勢に戻り、舵を握りなおせるのもリーダーとして必要な要素だと思います。青年会議所に限らず、私たちは社会生活の中で、必ず心の揺れや迷いがあります。大切なのはそのようなとき、組織の理念、運動の目的、自身の動機、それぞれの「何のために」を自身に問い、その答えを心の芯にもっておくことです。
不動心とは、何があっても絶対に動じない鉄のような心ではなく、感情の揺れも、行動の迷いもありながら、成すべき本分が芯にある、しなやかな心です。
あなたは何のために公に尽くすのか
その答えを心の中心に据え、不動心と燃える情熱をもって、ともに未来を描こう
※1 バックキャスティングとは、ありたき姿、あるべき未来を描き、そこから逆算して現在取り組むべき行動やその優先順位を決める手法
※2 アクティブシチズンフレームワークとは、パートナーシップを基盤に地域の需要や課題を割り出し、持続可能な解決策を策定し、協力団体とともに行動を起こしながらも検証を行うことです。分析、展開、実行、検証と4つのセクションに分ける考え方はPDCAサイクルに似ていますが、JCIが策定をしたこのフレームワークは特に持続的な地域課題解決に特化しています。
※3 カウンターパートとは、直訳すると対等な協力関係にある組織という意味ですが、協力してまちづくりに取り組まなくてはならないという観点から使用しています。
※4 シビックプライドとは、地元愛や郷土愛ではなく、この地域に住む一市民として、地域の発展に貢献していこうという、当事者意識に基づく自負心を意味しています。また、「都市に対する市民の誇り」と定義されています。